実は深い実験 その2

夜学/Naked Singularities Vol.2 の通奏低音は「時間」でした。「時間とは何か?」は相当に手強い問題であることは間違いありません。しかし非常に面白い問題でもあり,小林研の研究テーマの中核をなす「量子重力」でも本質的な役割を果たす対象です。


とはいえ,時には「別にどうでもいいじゃない。時間なんて流れていくんだから」とか,「時間が何かをわかったところで,時間が止められるもんでもないでしょ」という投げやりな気持ちになったり、あまりの手強さに「あー!もうどうでもええわ!!!」という気持ちになったりすることもあります(笑)

2019年11月に開催した「夜学/Naked Singularities Vol.1」では,「実は深い実験」のコーナーで,確率と時間の流れの関係を取り上げました。


時間を巻き戻して過去に遡ることができれば…,と思ったことがある人はたくさんいると思います。そして,それが叶わないということも私たちはよく知っています。過去に戻るとか,一度起きたことを無かったことにすることはできません。時間は過去から未来へ向かって一方向にしか進まないようです。

時間が一方向に流れるという性質は,物体がたくさんあるときに生じます。例えば,スプレー缶からガスをシュッと噴き出せば,ガスは部屋中に広がっていきます。このとき,そのまま放っておいたら自動的にガスがどこか一か所に集まってくることはまずありません。

これは皆さんの周りの空気も同じで,例えば酸素がたまたま一か所に集まってしまって,皆さんの周りから酸素が消えてしまい窒息してしまうということはまず起きないでしょう。なぜ起きないのか,それは,酸素でも窒素でも何でも良いのですが,部屋の中に均等に拡散する仕方の数が,どこか一か所に集まってしまう仕方の数より圧倒的に多いからです。(その3へ続く)


Kobayashi Shinpei / 小林晋平 Website

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