実は深い実験 その1

皆さんは「誕生日の "パラドックス"」を知っていますか?これは,

「クラスに何人子どもがいれば,その中に同じ誕生日の人が2人(以上)いるか?」

という確率の問題から派生した "パラドックス" です。

パラドックスとは,一見正しそうに見える前提に基づいて論を進めていくと,前提とは矛盾する結論が導かれてしまうようなものを言います。有名なところでは「アキレスとカメのパラドックス」があります。

「誕生日の"パラドックス"」には引用符がついていますが,これは正確にはパラドックスでなく,パラドックスっぽく感じられるものだからです。

1年は365日ですから,もしクラスに366人以上の人がいれば,その中には必ず同じ誕生日の人たちがいます。誕生日だとややこしいかもしれませんが,例えば5人集まると,中には血液型が同じ人たちが必ずいます。なぜなら血液型は A, B, AB, O の4通りしかないため,5人のうち4人がそれぞれ A, B, AB, O型にバラけていたとしても,5人目の血液型は A, B, AB, O のいずれかになるしかないため,必ず血液型がかぶる人たちが出るからです。誕生日も同じことで,誕生日が異なる365人が集まったとしても,366人目の人が現れたら,その人は必ず1月1日から12月31日までのどこかの誕生日を持つわけですから,すでに集まっていた365人のうち誰かと同じ誕生日を持つことになります。

このことからわかるのは,366人以上の人が集まれば,その集団に誕生日がかぶる人たちがいる確率は100%になるということです。


では,一体何人の人が集まれば,誕生日がかぶる人がいる確率は90%を超えるでしょうか。

答えは41人。どうでしょう?「あれ,少なくない?」と思った方はいませんか。366名以上で

100%になると考えると,何となく300名とか,330名とか,そのくらいの人数が集まらないと90%以上にはならないような気がしませんでしたか?この,「思っていたより,ずっと少ない人数で,確率が90%を超えるんだな」という感じ,これを引用符付きで "パラドックス" と呼んでいるのです。

夜学/Naked Singularities Vol.2 では,これを体感するためにおよそ365個の小部屋を段ボールと金網で作り,参加者の皆さんにそこへ40個のボールを投げ入れてもらいました(金網は100均で買いました。その網の目が364個だったので,365日にだいたい一致します)。


結果は,画像のようにいくつかの仕切りに2個以上のボールが入りました。これは誕生日が同じ人たちが何組か現れることに対応しています。スーパーボールを使ったのは,よく弾ませるようにしたことで,ランダム性がなるべく保障されるようにしたかったからです。

ここまででも「そこそこ深い実験」なのですが,夜学ではここからさらに「実は深い実験」であることを明らかにしていきます。この実験の背後にあるのは「時間の流れの向き」なのです。(その2へ続く)


Kobayashi Shinpei / 小林晋平 Website

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